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晩秋の川辺。
まだ日は高く、太陽の光の反射によって川がキラキラと輝いて見える。
ある事情で職を失った青年、紅葉奈津はその川辺の遊歩道を歩いていた。すると、川の近くで上下スエット姿の60歳を過ぎたあたりのおじさんが、川を見つめていた。
奈津は何かに引っかかり、様子を見る。すると、おじさんは俯いていた顔をあげたかと思うと、川にザブザブと入っていく。
「嘘だろ!?」
奈津は驚きながらも川の道を下り、川に入る。おじさんを羽交い締めにする。
「や、やめろって!!」
「うるさい、死なせてくれぇ!!」
「んな訳に行くか!!」
おじさんとの攻防戦の末、やはり若い男である奈津が勝ち2人そろって、奈津が買った缶ビールを飲んだ。
「なんで、川なんか入ったんだよ、おっさん?」
「おっさんじゃない。川辺文吉だ」
「かわべ?そこにある?」
場の雰囲気を明るくしようとした奈津のボケは、文吉の頷きによって消された。
「そう、そこの川辺に文吉で川辺文吉。だから、俺は川辺で死ぬのがお似合いだと思ってな」
文吉は大口開けて笑い、ビールをガブガブ飲んだ。奈津な眉をひそめながらビールを、1口飲む。
「何も面白くねぇよ。つか、なんで死のうとしたんだよ?」
「まだ20歳位の若造のお前なんかに、言いたくねぇっ!」
「では、我々ではいかがでしょう?」
二人の後ろから声をかけてきたのは、24歳の奈津より10歳、20歳くらい年上の男だった。男は激昂して立ち上がった文吉に、向けて名刺を差し出す。
文吉は男から名刺をひったくって、歩いて行ってしまった。
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