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始まり
お話し屋はマンションの一室だった。
その部屋は広く、開放的だった。
「デカッ・・・!」
「まぁ、ここがそれなりに儲かってる証拠さ」
あっけらかんと言い放つ朱雀に、呆気に取られながらも、一番奥の広々とした部屋に入る。
そこには、ソファやテレビ、生活用品が充実しており、とても店をやっているとは思えないほど、生活感漂う部屋だった。
「これ、店なんですか?」
「ここは、スタッフルーム。今はみんな仕事をしてて誰もいないんだけどね」
「へえ、どこで?」
「そこのドアの向こう」
ロッカーが並んでいる隣に扉があり、奈津は少しの隙間から覗いて見た。仕事部屋は、二つに区切られたスペースがあり、客と従業員の一対一で話せるスペースがあった。
「うちは、紹介制でね。看板もないから入っても誰にもバレない。まぁ、変な誤解が出来るかもだけど・・・」
「フー、やぁぁぁぁっと、終わったァァァ!!」
朱雀が仕事について話始めようとした途端、店に繋がる扉から男女二人が入ってきた。二人は奈津をじっと観察する。奈津は縮こまって、その視線を浴び続ける。
「・・・朱雀さん、誰ですか?」
「雇うことにしたんだ!名前はえーっと・・・」
「名前を知らずに雇おうとしてたんですか?その適当さ相変わらずですね」
女はため息をつき、男は楽しそうに笑う。奈津は女のほうに見覚えがあり、記憶を遡る。
「葉桜!お前、葉桜小雪だろ!?」
「そ、そうですけど・・・?」
奈津は引き気味の小雪に、顔をほころばせる。
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