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「なんだ、お前ら知り合いか?」
「え?えぇっ・・・と。あ!もしかして秋夏君?」
男に尋ねられ、小雪は記憶を遡り奈津の事を思い出した。首をかしげたのは、朱雀と男だ。
「は?そんな季節感溢れる名前なのか?」
「それは、あだ名です!俺、紅葉奈津って言います!よろしくお願いします」
ガバリと下げた奈津の頭を、男がわしゃわしゃと撫でる。奈津は驚いて顔を上げると、男が気持ちのいい笑顔を向けていた。
「俺は綾部梅雨だ。よろしくな!」
「はい、よろしくお願いします!」
仲睦まじいふたりを見て、朱雀はニコニコし小雪は苦笑いを浮かべていた。
店の方からチャイムが聞こえた。小雪や梅雨が慌ただしく、スタッフルームから出ていった。
「お客さんですかね?」
「店のチャイムがなる時はいつも、そう。さ、紅葉君、座りたまえ」
奈津は朱雀に進められるように、ソファに腰掛けた。
奈津が座ると同時に朱雀は契約書を差し出した。
「ここで聞いたことは他言無用で頼むよ。じゃないと、信用問題になるからね」
「あ、心配しなくても俺、友達いないんで他言できませんよ~」
「あっ、ごめん・・・」
奈津は朱雀を誤らせる気はサラサラなかったので、アタフタしてしまう。
奈津は若干、乱暴に契約書にサインする。
「はい、いいーよ。じゃ、明日からよろしくねー」
しょぼくれていたのが嘘のように、満面の笑顔を見せてくる朱雀に、若干の苛立ちを覚えたが、奈津はそのまま帰路についた。
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