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ラッキーアイテム
放課後、下駄箱で靴を履き替えていたら、幼馴染みの桃崎いちるが声を掛けてきた。小さな身体に腰まで届く長い髪。少し吊り気味の目が挑むように僕に向けられている。
周りの人たちからはおそらくちょっとした奇人変人の類に分類されているだろう幼馴染みは、大股で近付いてきたかと思うと小さな包みをずいっと僕の目の前に突き出した。
「何これ?」
「やる」
答えになっていない答えが独特の少しハスキーな声で返ってくる。
けれど僕にはその包みがなんなのか、実は察しがついていた。
と言うか、今日は二月十四日、バレンタインデーなのだ。男女問わず、普通多くの高校生が多少なりと気に掛かる行事だと思う。その手の行事にあまり興味を示さない少数派のいちるは、その年の気分でくれたりくれなかったりまちまちなんだけど。
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