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去って行こうとする怜をがっちりと握って離さず、その身体を抱き込むフレデリックを誰もが驚嘆の眼差しで見つめる。それほど、フレデリックは親密な付き合いを外向きで見せることもなければ、実際にすることもない。
相手がどのような者でも、この場の者達は驚いただろう。だが、怜は普通の者ではなかった。恐ろしき美貌の者と世界の王者がそこにいるのだ。
「お前、離せ」
静かに怜が告げるのに対して、フレデリックは逆に親密さを見せつけるかのように、美しい耳元にわざと顔を寄せた。青年が身を引こうとしても許さず、抱き込む。
「暴れれば、もっと注目を集めることになるぞ」
「もう十分、お前がいるだけで注目されている」
心底嫌がっていても怜は決して惨めな立ち姿をさらさず、堂々とそこにあった。遠目から見てもその姿は人目を引いただろう。
青年に引きずられるように、その色香に絡めとられるかのごとく人がゆったりと集まってきている。
それに乗じて、ガーウィンはある一人の人物を引き合わせるために、怜のもとへと誘導していた。彼の名前は、ウェイン・グランジュ。
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