27人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
怜がフレデリックに名前を告げた男だった。そしてサイキとの関係も深く、おそらくルガーLCPを渡すには何の問題もない、アメリカ陸軍中将その人であった。
そして、怜は彼との面識がなかった。これほどまでにフレデリックが早く動かなければ、サイキとの関係上この中将に会いに行く時間があったはずだ。
だが、フレデリックは追及の手を緩めなかった。
怜がふとした風を感じたように、人ごみの中を移動してきたガーウィンに目をやる。そしてその隣の人物を見て、軍人であることを感じた瞬間に、男の計略を思い知った。もはや取り繕いすら許されないと看破する。
ここまでする男の執念を、怜は計算できていなかった。
男が苛烈なのか、それとも怜が甘かったのか。それとも双方か。完全に今や青年は後手に回っていたといえる。
面白いことに、パーティーに来ていた者達は、無言で二人の様子を見ていた。軽食も会場内の一部には用意されており、飲み物も出回っているそれに誰も目をやらず、男と青年を見つめる。これから何があるのかと。
いつの間にか、フレコが怜の横に来ていた。フレデリックは決して腕を離そうとしないまま、ウェイン・グランジュと青年を引き合わせていた。
最初のコメントを投稿しよう!