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市街地から少し離れた高台に、その白亜の校舎は佇んでいた。
まだ設立されて間もない、新しい女子高だ。
例年より早く梅雨が明け、澄んだ空気の中で少し高慢知己なその白が、ひときわ眩しい。
時刻は11時10分。
3時限目の終業のベルが響き渡ると、女の子特有の甘ったるい香りのする教室は、途端に賑やかになる。
高見カオルは一週間前に赴任してきた新しい生物の教師がテキストをまとめて教室を出ていく様子を眺めていた。
なぜか自然と目が行ってしまう。
きっと手でなでつけただけだと思えるくせっ毛の髪、愛嬌のある二重の目。特に二枚目というわけでもないが、一つ一つの動き、身のこなしがしなやかだ。
スラリと背が高く、うまくスーツを着こなしている。外見に気を使うタイプではなさそうなのに、何となく生まれつきのセンスの良さが感じられる。
さらに女生徒の気持ちを引きつける脱線トークは抜群だった。飄々としてつかみ所はないが、何故か気になる。
じっと見ていると視線に気づいたのか目が合った。
ニッと笑いかけてきたのでカオルは慌ててわざとらしくプイと顔をそむけてみる。
別に気にする様子もなく、ほんの少し笑うと彼は教室を出ていった。
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