嫌いの理由

4/4
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
友達を作らず勉強をし、学年では常に上位に名をあげ続け、家ではママが殴られ、怒鳴られないように声を殺し、姿を見せないようにした。 それでもアイツは必ず難癖をつけてママをいたぶる。 そんな日常が当たり前で、早く大人になりたかった私は、アイツが家に居る昼間の時間に公園で芽衣さんに出会った。 声を掛けたのは気紛れ。 一人でスケッチブックに向かう姿が一人で本を読み耽る自分と重なったのかもしれない。 誰かと、ママ以外の、バカみたいな同級生とは違う誰かと話をしたくなったのかもしれない。 本にばかり向かう私をクラスの男子は『根暗』『ガリ勉』『ブス』などと陳腐な言葉を並べてからかってきたが 「迷惑かけてないでしょ?逆に迷惑だから近寄らないで」 と目を細めて言い返すと腹を立てて突き飛ばしてきたから、1発叩いてやったら泣いた。 以来、誰も近寄らなくなった。 手が出る……私もアイツと同じなのか。 そう思えて悔しくて、腹立たしくて、布団の中で涙が出た。 こんな私が留衣や公平とつるむようになると、周りの子達は怪訝な顔をし、2人に「関わらない方がいい」などど陰口を吹き込んだ。 でも留衣も公平も 「麻琴は変な奴じゃない」 「美人だし、口は悪いけど良い奴だぞ」 「「変な事言うな!」」 なんて言い返して私を除け者にする事がなかった。 正直、嬉しかった。 家の事を知っても、そう言ってくれるかな? ……うううん、絶対、知られたくない。 そう思ってたのに、芽衣さんと留衣にバレた。 家まで2人が送ってくれた日、帰宅していた暴れるアイツを撥ね付けて、ママを救ってくれた。 芽衣さんの言葉でママは踏ん切りがつき、離婚すると決めた。 初めて人前で思いっきり泣いた。 ママは私に二親が必要だと思っていたらしい。 僅かでもアイツに愛情がある、と思いたかったらしい。 アイツは出ていった。 今ではママと2人で普通の穏やかな日常と呼べるものを送れている。 私は、笑えている。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!