甘くて優しいもの

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アイツの事がバレてから数日後、私は留衣と向き合った。 恥ずかしくてどうしようもなかったけど、芽衣さんと留衣のおかげでママはアイツと別れる事を決めてくれたから。 一言礼を言いたかったのだ。 けど、留衣は俯いて言い辛そうな私に 「悪かったな、麻琴の家の事に口出して」 と謝ってきた。 私が「はあ?」と頓狂な返事をして怪訝な顔をすると 「母がな、いくら友達でも知られたくない事はあるし、言いたくない事もあるんだって。 麻琴は凄く我慢して、お母さんを守ってきたんだって言ってた。 でもさ、俺は友達だから麻琴が困ってたり辛かったら言って欲しいんだ」 なんて、拗ねたような、照れたような様で言い、私から視線を逸らした。 「……判った……ありがと」 私はその言葉に気恥ずしさが増してボソボソと礼を返した。 留衣は「ああ」と態とらしく声に出し、チラリと目を向け、視線が絡むと2人してはにかんで笑った。 公平は私の家庭事情を何となく知っていたらしい。 親から色々と噂話を聞かされ、問われた事があるようだ。 痣を作ったママを見掛けた主婦達が憶測を並べて話していた事は私も知っていた。 時折「大丈夫か?」なんて言ってきた事もあるから、「何が?平気だけど?」なんて可愛げのない態度を取っていた私が 「離婚する事になった」 と努めて然り気無く伝えると 「そうか、それは良かった!あ、良くないよな、ごめん、え~、御愁傷様です」 と茶化すように頭を下げた。 留衣の部屋で3人で爆笑した。
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