甘くて優しいもの

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芽衣さんは初めて会った時から私の痣や小傷の事に気付いていたし、時々見掛けるママの様子と噂話などから家庭に問題があると判っていた。 だけど 「麻琴ちゃんはね、真っ直ぐ前を見てたから。 強がって見えたけど、ママを守りたいって頑張ってたから。 私はね、他人だから口を出して余計な事して掻き回しちゃいけないと思ったんだ、 狡い大人だからね。 でも、麻琴ちゃんが少しでも笑顔でいられる場所があればいいなって思って、私や留衣の所で笑ってくれたらいいなって思ってたんだ」 そう言って苦笑いしてた。 「ごめんね?」 って、優しく頭を撫でて抱き締めてくれた。 私が何故芽衣さんと居たかったのか。 何故、話をして、追いかけたかったのか。 それは、芽衣さんが真っ直ぐな目で私を見詰めてくれたから。 見ず知らずの子供を訝しがりもせず、話をしてくれたから。 私のなりたい『大人』の姿だったから……かもしれない。 私の憧れの人。 私は芽衣さんのように強く、大切に思う人を守りたい。 「明日、チョコ買う?」 暗くなった住宅街の等間隔に並ぶ薄暗い外灯が並ぶだけの帰り道、公平がまたもチョコの話を振ってくる。 「なんで? そんなにチョコ食べたいの?」 可愛くもない、トゲトゲした言葉と細めた視線を返した。 「いや、麻琴の事だから多分そうじゃないかなぁ~っとね」 ニヤリとして含みある顔で私を通り越して留衣に視線を投げ掛けた。 留衣は戸惑った様を見せ、慌てて 「んっ? あ、ああ、母に渡したいんだろ? 付き合おうか?」 などと会話に参戦してきた。
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