2月14日

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「いくつ?」 左隣から公平が問い掛ける。 「4つ」 右隣から留衣が答える。 「よしっ! 俺7つ♪ 勝った!」 「はぁ……嬉しいか? お前、彼女いんのに」 「そりゃーね、美希のは別。 本命は別格だろ。 コレは女の子達からの好意だからな」 「義理チョコが嬉しいなんて……バカらしい」 2人の会話、と言うより公平の浮かれ具合に呆れ、トゲのある言葉を吐き出す。 「……なんだよ、別にいいだろ。 毎年この日はどれだけ女の子に人気があるか判る日なんだぞ。 留衣には負けらんねぇもんね! 連勝記録更新中!」 「俺は競ってないぞ…… 貰っても後の事考えると面倒だし。 女子は皆[へのへのもへじ]で、 顔が判んねぇから名前とクラス覚えるのが大変だしな」 「……難儀な悪癖だな」 「なんで女子だけが[へのへの]なのか意味判んない……」 留衣が疲れたように白い息を吐き出し項垂れる。 私、安住麻琴(あずみ まこと)と左隣の広岡公平(ひろおか こうへい)、右隣の間留衣(はざま るい)は小学校5年の時からの腐れ縁……友達。 クラスが同じになったのは高校に上がってからで、男女の付き合いなど皆無。 私達を繋ぐものは[芽衣さん]だ。 芽衣さんは留衣の母親で36歳に見えないバツイチ独身女性。 芯の通った強さを持ち、優しく、ちょっとドジな所の垣間見える綺麗で可愛い人。 私達はほぼ毎日3人で登下校して必ず(はざま)家に帰り、芽衣さんと留衣の手料理を食べて寛ぎ、談笑して其々の自宅に帰宅するのが日課。 今も3人で2月の冷たい風が時折吹き抜ける寒い中を、芽衣さんの待つ家に向かっている最中だ。 「麻琴は今年もくれないのか?チョコレート♪」 「はあ? なんで私があげなきゃなんないの?」 「いや、長い付き合いだけど、貰った事ないなぁ~って思っただけ」 「そう言えば、そうだな……」 公平のふざけたニヤけ顔にイラっとして目を細めると、留衣まで不思議顔で首を傾げて覗き込んでくる。
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