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「なんで私があげなきゃなんないの?
バレンタインなんて興味ないし、チョコなんて自分で毎日買って食べられるじゃない」
〈ふんっ!〉と鼻を鳴らして前を向き、歩調を強める。
「男なんて嫌いだもの、わざわざ買ってあげたりなんかしたくないわ!」
私の言い分に2人は顔を見合わせ
「「だよなぁ~」」
と声を揃えて苦笑いをする。
その声にちょっとだけ後ろめたさと気恥ずかしさを感じて、態とらしくツンと清まして背筋を伸ばした。
「うぅぅ寒っ! 早く帰り着こう!」
「そうだな、母がホットチョコ作ってくれてるし」
「芽衣さんのホットチョコ♪楽しみだな!」
「毎年この日だけ作ってくれるんだよな。板チョコと牛乳があったから、今頃作ってると思う」
「よしっ! 早く帰ろうぜ!」
「……俺の家だけどな」
芽衣さんの手作りが待っていると判ると、途端に私もテンションが上がった。
留衣にとっては唯一無二の家族で、誰よりも大切に思う母親。
公平にとっては初恋の人で、昨年の夏に玉砕したにも関わらず顔を緩めて傍に近付こうとする想い人。(でも今は他に大事な彼女がいる)
私にとっては…………憧れの人。
私は男が嫌い。
だからって女が好きってわけじゃなくて、ただ、男が苦手で、無闇に関わりたくないだけ。
現に2人は男だけど、普通に話せるし、笑い会える。
ちゃんと理由があって嫌いなのだ。
「麻琴も母のホットチョコ好きだろ?急ごうぜ」
そう言って爽やかな笑顔を向けてくる留衣に笑い返せる。
「当然よ!」
そう答えて2人と歩調を合わせ、寒さに肩を竦めながら間家に急いだ。
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