18人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
私は男が嫌いだ。
その訳は……父親にある。
私は3人家族の中流家庭に育つ、どこにでもいる子のはずだ。
ただ、家の中は散々なものだった。
父親はサラリーマンで、母親は短時間のパート勤めをしていた。
幼い私の記憶にあるママはいつも怯えていた。
父親は外面が善く、ニコニコと温厚で愛想がいい。
だが、玄関を潜ると人が変わり、ママに対して暴力を奮う最低な奴だ。
食事が気に入らない、風呂が用意出来ていない、掃除が行き届いていない、欲しい物が手元に出てこない、自分の座る場所に衣類1枚あるだけでそれを投げ付け、怒鳴る。
テーブルを蹴りあげ、椅子を倒し、食器を投げ、拳を奮う。
一口も手をつけず、床の上に食事をばらまくなんて日常茶飯時だった。
「お前らの為に下げたくもない頭下げて働いてやってるんだ!感謝しろ!
家でまで俺に気を使わせる気か!!」
それがアイツの口癖だ。
ママは
「ごめんなさい……ごめんなさい」
と繰り返し、怯えて震え、声を押し殺して泣く。
ママだって働いてるし、家事だって手を抜かずにしている。
小さな私がママを庇いアイツに楯突くと、アイツは私を殴り飛ばし
「お前の躾が悪いせいだ!ガキのクセに親に生意気な口利きやがって!」
と足で私の体を踏みつけた。
尽かさずママは私を庇い
「子供に……、この子に手を出さないで!」
と蚊の鳴くような声で呟きながらアイツの暴力を全て自分の体で受けてくれた。
私はママの服を手が白くなるほど握り締め、怒りのままに蹴り続けるアイツを敵視して睨み続けた。
熱いものが頬を伝っても、拭わなかった。
以来、私はアイツを『パパ』などの呼称で呼ばない。
最初のコメントを投稿しよう!