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あながち本当に兄妹じゃないのかも…。
だって兄は初めからこの家に居たわけじゃない。
私はトントントンと軽やかに階段を上がると、自分のベッドへとダイブする。
気になるのは兄の家出なんかより、前より減った手紙の頻度。
それを寂しく思う私はかなりの冷徹感で変態なんだろう。
秘密の恋人と名乗る差出人。
その人が私の前に現れるのをずっと待っている。
ずっと待っているのに…、なぜだかちっとも現れない。
私はベッドの下へと手を伸ばし、お煎餅が入っていた少し醤油くさい空き缶を取り出した。
そこには数年分の手紙が全て収納してあるのだけれど、もう何度も読み返しているせいか、あちこち破れてボロボロだ。
太(ふとし)…。
手紙を読む度に思い出す。
きっと彼が秘密の恋人に違いない。
そんな妙な確信が私の中にはあった。
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