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「えー!」
三木さんはフフッと可笑しそうに笑っていた。
クリニックの午前中はお上品な年配の患者が占める中、彼だけが独特の雰囲気を醸し出している。
その彼が視力検査で呼ばれれば、女性陣はこぞって注目する。
皆が彼に注目していた。
「千八百円です。」
私はその中でも冷静だった。
淡々として仕事を遂行する。
毎度一万円札で支払う彼に、
「五千、六千、七千、八千と…、二百円のお返しです。」
無表情で釣り銭を渡した。
その間の三木さんは、彼のお顔を間近で幸せそうに観察している。
骨の上に被った表皮は皆が平等にあるべきだと、私は兄を思い浮かべながらつい顔を顰めてしまう。
「え…?」
その顔に驚く彼。
「お大事になさって下さいね。」
けれど私は何事もなかったかのようにニコリと笑った。
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