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ゾクゾクとするような鋭い眼光が前髪の隙間から覗き、私はビクッと震え上がる。
整った顔の人が真剣な顔をすると、こうも怖いものなのか。
兄はいつも穏やかに笑っているから、そんな事にも気付かなかった。
「カエルは知らない…。
それにここを通る度にあんたがそこを覗いてるから…。」
「え…?」
「深夜とかよく見る。」
「じゃあ月村さんはこの近辺に…、住んでらっしゃる…?」
自分の勘違いを指摘されてか、たちまち言葉遣いがおかしくなる。
やはり強気になんかできそうにない。
「そこのマンション。」
すると彼は私のマンションの斜めを指差した。
ゲゲッ!!
それを見た瞬間にピクリと眉が勝手に持ち上がる。
そこはこじんまりとした鉄筋コンクリートのマンションで、私はそのお洒落な外観を一目見て気に入り、けれど家賃が高くて断念したいわく付きの場所だったのだ。
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