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名刺だった。
『Transparent
代表取締役 : 月村 翠』
代表取締役!?
受け取った弾みでついつい見てしまった彼の名刺には、目を疑うような文字。
私は彼の肩書きに内心とても驚いていたけれど、敢えてそれを顔には出さずに無言を貫いた。
『罠にはまってはいけない。
イケメンは世にも恐ろしい生物だ。』
それを自分の中で呪文のように三回程唱えると、私はもう一度彼に軽く頭を下げ、さっさとその場から立ち去った。
立ち去ったと言っても自宅マンションの真ん前だから、階段を上がる私の後ろ姿が彼にはバッチリ見えているし、エレベーターのないこのボロっちいマンションの三階までの足音が、彼の住むマンションまで響いてそうで怖い。
けれど怖いのはやはりダントツで兄だった。
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