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太というのはもちろん本名ではなくあだ名だ。
私が付けたのだけれど、全く本名が思い出せないくらいには遠い記憶。
太っていたから太。
丸くてデブだったから太。
子供の頃に安易に付けたあだ名だけれど、太は私の初恋だった。
よく一緒に間宮の駄菓子屋にお菓子を買いに行き、二人で仲良く分け合って食べたのを覚えている。
けれど突然いなくなってしまったんだ。
幼かった私にはその意味がわからず、そしてその代わりと言ってはなんだけれど、私に突然兄ができた。
確かそれは私が小学二年生の時だったと思う。
『初めまして透子ちゃん。』
金髪の、瞳はスカイブルー。
キラキラと微笑む妙に大人びた少年。
それが四宮 樹、私と兄との初対面だった。
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