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馬車の中ではヒンニィとカイの二人きりだったが、二人とも無言のまま、ガタガタと馬車の揺れている音だけが車内に響いていた。
カイは窓枠に頬杖をついてずっと外を眺めている。
その様子をヒンニィは手持ち無沙汰でドレスのスカートの裾を掴みながら、向かいに座るカイをちらりと見やる。
思えばカイの顔をまじまじと見るのは初めてかもしれない。
短めの柔らかそうな毛質の髪に、大きめの澄んだチャコールグレーの瞳。女性と間違いそうなくらい長い睫毛が印象的だが、首元にある喉仏や頬杖をつく腕の筋肉の感じが男性だと実感させ、少年から青年へと変わる凛々しさも兼ね備えているように見えた。
また、これから起こるであろう予期せぬ出来事に対して考え込んでいるのか、思い詰めている表情に儚い色気のようなものを感じてしまい、ヒンニィは頬を赤らめる。
そんなヒンニィの視線に気が付いて、カイが口を開こうとした時、急にぐるるるるっと大きな音を出してヒンニィのお腹が鳴った。
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