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あの二人との出会いが、僕に分岐点を生み出した。
まったく関心のなかった現実世界の人間に突然興味が湧いた僕は、二人の悲劇の内容が書かれたメモをポケットに外へ出た。そして、毎日公園のベンチから通行人や公園の利用者をウォッチングすることにした。
何故かと言われれば、その理由は一つしかない。また夢の中の彼女に会うためだ。
ただ、僕はそこまでバカじゃない。もし彼女に似た人が見つかったとしても、それが彼女とは全く無関係の別人だということは理解している。でも、探さずにはいられなかった。何度寝ても、何度夢を見ても、彼女が現れることはもうなかった。彼女を作り出した張本人であるはずの僕が、何故これだけ彼女を探しているのに会えないのか、自分でも分からない。もう一度構築すればいいはずなんだ。でも、何度彼女の表情の見えない泣き顔をインプットしても、それが吐き出されることはなかった。彼女はただ、3分間生きて、僕の脳内に一生取り除けない存在として残っていく。
誰だって妄想はする。もしこの彼女のことが、僕のただの妄想として捉えられるのならしょうがない。でも、僕はまだ彼女の涙の訳を知らない。夢の住人とか関係ない。何故あの男は白衣を着ていたのか、二人は付き合っていたのか、何故そんなに泣いているのか。何も知らないんだよ。
僕に教えてくれ。言わなきゃ分からないだろ。何故僕の前に現れたんだ。教えてくれ。何故僕だったんだ。
僕は、存在しない人を粗末に扱えないほど、人に固執してしまうんだ。
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