プロローグ「花と華」

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『ねぇ、今日の約束忘れてたでしょ。私、駅でずっと待ってたんだけど』 電話の相手は、大学でよくつるんでいる坂尻という女友達からだった。 約束をすっぽかされ、今にも雪が降りだしそうな寒空の下に何時間も待ちぼうけを食わされた坂尻は、俺に対しかなりご立腹な様子なのが電話越しからでも窺えた。 「あ~……うん。ごめん」 電話口から聞こえてくる坂尻のふてくされた声に曖昧な言葉を返しつつ、俺は交差点の歩行者専用信号機が青に変わるのを、人ごみに紛れて待っていた。
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