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その日は雨の日だった。
「いつまで通うんですか」
「はい?」
彫刻の君が後ろの席から声を掛けてきた。
「ここにいつまで居るんですか?」
「いつまで?」
意味が今ひとつわからなかったが答えた。
「来れるうちは来ますが」
「……仕事は何を?」
思わぬ質問だった。自分自身について興味を持たれるとは思わなかった。
「仕事は、…あれ?」
なんだ。自分の仕事がわからない。混乱した。それでも彫刻の君は質問を続けた。
「歳は?」
「歳は、…歳?」
「名前は?」
「名前は、」
「最初に雨宿りしに来た日のことは?」
「雨宿り、……確か。いつも通り定時で上がり帰宅して。いや、違うな。買い物だ。商店
街で大通りを抜けて、ああ。そこでスリップしたトラックが横倒しになって、」
「それでどうなりました?」
「自分は…死にましたね」
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