第1章 木漏れ日の木の下で

3/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「食べ終わった」 翠はそう言って、アイスコーンを包んでいた紙を綺麗に折る。 ちょうど私も食べ終えた。私も紙を綺麗に折る。 「私、捨ててきてあげる」 私はそう言って翠の折り終えた紙をひょいと取る。 「お、さんきゅ」 翠がそう言って笑う。私は「あーい」と軽い返事をして、屋台の横に設置されているゴミ袋へと向かった。 * 屋台の場所まで戻ると、すぐにゴミ袋を見つける。 この辺にはあまり屋台は少ないので、このアイスの屋台は結構人気がある。 とは言っても、比較的田舎な地域なので並んでいる人の数はいつも大体3~5人程度だ。 私はアイスを盛り付けている店員に「ごちそうさまでした」と挨拶をした後、ゴミ袋に紙を捨てる。 店員は「おう!いつもありがとね!また食べにおいでな!」と笑顔で元気に返事をしてくれた。 私はその後すぐに翠の元へ行こうとした。・・・のだが。 店員がアイスを盛り付け終え、並んでいた少女にアイスを「どうぞ!」と手渡す。 少女はぺこりとお辞儀をすると、小走りに下を向きながら公園の奥へと向かった。 するとその少女は、下を向いていて前が見えていなかったせいか、正面から来た男性に肩をぶつけてアイスを落としてしまったのだ。 えぇ・・・。うそでしょ・・・。 少女は一瞬固まり、落ちたアイスをじっと見つめている。 その後その場にしゃがみ込み、さらにじっとアイスを見つめていた。 どうしよう・・・。あの子すんごい落ち込んでるんだけど。 私は少し悩んだあと―正確にはほぼ無意識的に―少女の元へと向かった。 少女の隣まで歩いてきた。が、少女は全くこちらに気づく気配がない。 とても長い、綺麗な黒髪が、少女を包み込んでいる。 前髪も後ろ髪と同じ長さをしている。分け目がないため正直貞子のようだ。 その長すぎる髪のせいでこちらが見えていないのだろう。 もしかすると、先ほど男性とぶつかったのもそのせいなのかもしれない。 なんでこんなに髪を伸ばしているんだろうな・・・と思いつつも、ひとまず少女に声をかける。 「落としちゃったの?」 私がそう尋ねると、少女はビクッと体を震わせたあと、小刻みに震え続けた。返事は帰ってこない。 「ご、ごめん!驚かせちゃったかな?」 その姿を見て驚いた私は、慌てて尋ねる。これもまた返事はない。 やれやれ。どうしたものか。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!