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私はさらに顔が赤くなる。誰もいないと思っていたのに、聞かれていたなんて・・・。
私が羞恥心でいっぱいで動けないでいると、少年は私の横まで歩いてきたあと、私と同じようにちょこんと座った。
私が呆然とその一連の動作を見ていると、少年が口を開き始めた。
「俺も、よくここにきて嫌なことがあると叫んでました。最近はあんまり叫んでなかったんですけど・・・」
少年は川を見ながらそう呟く。私は彼の意外な言葉にまた呆然とする。
「最近は、あなたの歌声を聴いていると嫌なことも吹き飛んでしまって、そんな必要もなくなっていたんです。あなたの歌声で、僕は救われています」
彼の顔にはうっすら微笑みが浮かんでいる。少年の優しい声と、一つ一つの言葉に引き込まれる。
「ずっと・・・聴きに来てくれてたの・・・?」
私が彼の顔を見つめながらやっと声を絞り出して尋ねると、彼は「はい」と言いながら頷いた。
「あなたの歌が、あなたの歌声が好きです」
そう言ったあと、彼は私の方を向く。
目が合う。吸い込まれるような深緑の瞳。
すると間もなく、彼はまた川の方を向く。
私もそれにつられて川を向いた。彼は至って冷静だが、私はきっと顔が真っ赤で、驚きのあまり変な顔をしていたに違いない。
一瞬の沈黙が生まれる。私の心には羞恥や嬉しさや混乱が渦巻いていて、感情がうまくコントロールできない。
私は震える声で、「ありがとう・・・でもごめんね、今日はなんか・・・お見苦しいところを・・・」と言った。
すると彼は「そんなことないです」と言いながら首を振る。そして立ち上がり、私の前まで歩いてきたあと、私と正面で向き合った。坂になっているが、目線は私のほうが下で見上げるような形になる。
深緑の瞳が、再び私を見つめる。ゆるいパーマのかかったふわふわの髪が風に揺れる。
「僕は今日、あなたにお願いがあってここまで来ました」
彼の姿がちょうど太陽の影になり、逆光で見える。
私はその言葉に息をのむ。
「お願いって・・・?」
私がそう言うと、彼は一呼吸置いた後口を開いた。
「僕と一緒に、音楽をやりませんか?」
夕暮れの河川敷に、彼の芯の通った声が響いた。
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