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「修はさー、クラシックよりロックの方が好きなんだよねッ」
「は……?」
クリスマスイブの夕方。待ち合わせの喫茶店で席に座るなり、先に来ていた現在の俺の彼女、さつきが言いだした。
呆然とする俺の耳に、店に流れる音楽が流れ込んでくる。
何? クリスマスソングの話? と頭の中で考えていると、フーッと勢いよく溜め息を吐いてさつきは頬を膨らませた。
「中野がー、『修はクラシックの方が好きなんだぜ』って言うのよッ!」
「あぁ?」
どうなのよ! とドンッとテーブルを叩くさつきを、お前こそどうなのよ、と見返す。
「いつもロックの話で盛り上がってんのにねッ。私達!」
いや、そんなに盛り上がっちゃいないだろ。
CDショップのアルバイトをしている為、一応音楽の事は全般的に知っている。だが、特にロックが好きという訳ではなかった。一方的にロックについてしゃべっているさつきに、話を合わせてただけだ。
返事もせずに黙ったままでいる俺の態度が気に入らなかったのか、さつきはアイスレモンティーを持つと、ストローでズルズルと音を立てて啜った。
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