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「中野にハッキリ言っといてよ! ロックが好きなんだって!」
何をそんなにブリブリと怒っているのか、中々怒りが治まらない。「ああ、そうだな」と俺が等閑に頷くと、さつきは「仲間を得た!」とばかりに勢いよく言葉を発した。
「だいたい何よ、あの中野はッ! バカじゃないのッ? 大学の単位もヤバいクセにさッ。留年すんじゃない? アイツ」
晴美に早く別れるよう言お! とレモンティを激しくかき回すさつきの前に、俺は小さな包みを置いた。それは綺麗にラッピングがされ、誰が見てもクリスマスのプレゼントだと判る代物。
「……えっ」
驚きと喜びが入り混じった顔で、さつきが固まる。
「クリスマスプレゼント」
そう言って、俺は座ったばかりの席を立った。水を持って来たウェイトレスに手を振って、いらない事を示す。
「それと、餞別」
いらないなら捨ててくれ、と伝票を手に取った。
どうせ、大して高くもないピアスだ。好きにしてもらって構わなかった。
レジへと向かう俺に、「……なんでぇ?」と、先程までとは打って変わったか細い声が届く。
「俺の、友達の悪口言う奴とは、付き合いたくないから」
今にも泣きそうに目を潤ませたさつきから目を逸らせ、俺は付き合ってから初めて、本心を彼女に伝えた。
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