ある事を口にした

5/7
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「それだけか?」  それくらいであんなに怒るのか?  「いやー、その後『そんな事も知らねぇの? それでもカノジョ?』って、思わず」 「ああー」  そりゃ怒るか。  短く息を吐いて、ソファの背に凭れた。 「なんでお前は、そうやって人の彼女にチョッカイ出すワケ?」 「チョッカイって……。人聞きワリィ!」  プゥッと頬を膨らませ、4ツに切ったケーキを1切れずつ2枚の皿に移していく。 「俺がクラシック好きじゃないの、知ってんだろ」  俺がそう言うと、ククッと肩を震わせ、笑い始める。一通り顔を伏せて笑うと、上目遣いに俺を見上げた。 「で? 誤解は解けた?」  悪戯っぽく微笑んで、ケーキの乗った皿を俺へと差し出す。それを受け取って自分の前へと置いてから、俺はシャンパンの瓶に手を伸ばした。 「別れてきた」 「えぇーッ?」  飛び上がる程驚いた浩行に、「ふきん」と伝える。「あ、ああ」と動揺したままキッチンへと走った浩行は、すぐさまふきんを持って戻って来た。 「フラれたの?」  俺の所為で? とふきんを渡してきながら訊く浩行に、こいつ学ばないな、と顔を顰めた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!