ある事を期待した

2/5
前へ
/5ページ
次へ
 1月1日。  目を覚ますと、何やらガチャガチャと物音がする。それも、どうやらキッチンからのようだ。  自室のドアを開けた途端、鼻へと届いた匂いに、はあ? と首を傾げる。 「……煮物?」  元旦の朝から?  何やってんだよ、あいつ。  ボリボリと頭を掻きながら、キッチンへと向かった。  案の定、鼻歌混じりでキッチンへと立つ俺の同居人、中野浩行の前には湯気を湧き上がらせる鍋がある。 「何やってんの? お前」  眉間に皺が寄るのは仕方のない事だと思う。ダルいにも程があるから、冷蔵庫に凭れ、瞼を半分閉じた状態で訊く。 「お? 起きたな。……味見してみる?」  笑顔で振り向き、浩行はお重に山盛入った黒豆を菜箸で抓み、俺へと差し出した。 「……黒豆嫌い」 「うっそ! マジで? わがままだなぁー。修は」  そう言って、自分の口へと入れる。 「美味い」  自画自賛だ。 「……初めて作ったにしては」  そーなのかよ。 「なんで元旦の朝から黒豆煮てんの? お前」 「ブッブー、昨日の晩からですぅー」 「徹夜ぁ?」 「そう」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加