ある事を期待した

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「まあまあだよ。熱くてあんま味、判んなかったけど」 「そっかー」  なぜ今のを褒め言葉と取るのか。嬉しそうに笑った秀行は、菜箸を舐め「えへへー」と笑った。  顔でも洗おうと背を向ける俺に、「今日バイトだろ?」と訊いてくる。 「ああ。お前は? 初詣でも行くのか?」 「まさか。カノジョのいない俺は、寂しく今日は料理と、テレビを観て過ごすのだ」 「別にカノジョとじゃなく、トモダチと行ったっていいんだぜ。初詣は」 「そのトモダチが、今日バイトなんだよ。明日もバイトだろ? 明後日、一緒に行こうぜ」 「…………俺以外に、友達いねぇの?」 「い・る・け・ど!」  菜箸を振り回して言った浩行に、笑み返す。 「ウソだよ。明後日、一緒に行こう」 「おお!」  満面の笑みで返してくる浩行に、思わず何かを期待してしまう。  ――『間接キス』  そんな事を思う気持ちも、そんな事にときめくつもりもないけれど、この笑顔は他の誰にも見せたくはないな、とは思った。
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