Prelude...

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チラッと確認すると、あいつは鼻歌を歌いながら、意気揚々と歩いていた。 「なんだよ、来ると思って待ってたのに」 「はは、そんな趣味はないよ」 声が上擦らないように心を落ち着かせて言葉を出す。「冗談だよ」と笑うこいつはどうやら私の行動には気づいてないようだった。 「あ、トイレでさ1つ思い出したんだけど、ある生徒が『ロッカーからのりたまこが突然出てきた』って騒いでたことがあったぜ。その時はGみたいな虫の事かなと思ったけど、なんかの虫じゃねーか?」 「そうか、でももういいよ。ありがとう。後は自分で調べてみるよ」 そう言うと、「そっか?まぁ、あんま気にするなよな。気にし過ぎるのも体に毒だぜ?」なんて肩を叩いて彼は笑った。 その後、暫く他愛もない話を交わし、お猪口が空になった所で、私達は居酒屋を後にすることにした。 「とりあえず、五丁目の交差点まで一緒か」 「五丁目?ああ、あの阿波田屋のあそこか。学生時代によく食ったな、どら焼き」 「どら焼きじゃなくて柏やきだろ?でも懐かしいな」 少し昔を思い出すふりをしながら、なぜこいつは『のりたまこ』を虫だとか嘘をついたのかを私は考えていた。 あのメモ帳には決して虫ではない謎のキャラクターのようなイラストが書いてあった。 スケルトンの名刺が差し込まれていたことからも、こいつの私物に間違いない。
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