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もう少し時間があれば…
……っ!?
その時、私の身体に異変が起きた。
急に頭の奥がグラグラっと揺れた。激しい目眩が私を襲った。平衡感覚が奪われそうになり、必死に踏ん張ろうとするも、身体が言うことを効かない。
思わずこいつに身体を預けてバランスを取ろうとした、その瞬間。
「っ!?」
「お前、ちょっと知り過ぎたね」
突然こいつは私の胸辺りを思い切り突き飛ばした。
私は背中から車道へと飛び出す形で投げ出されてしまった。
目に映ったのは、薄く浮かべたこいつの笑みとみすぼらしい格好に不釣り合いな真っ白な新品のスニーカー。
そして耳を劈いたのは、猛スピードで走って来ていたであろうトラックからのけたたましいクラクション音だった。
その瞬間、私の脳裏に沢山の映像が流れ込み始めた。生まれて初めて見る走馬灯なのだろうか。
しかし、その最後、あのメモ帳に描かれていた絵が脳内で反転されて私の眼前に映し出され、私は思わず目を見開いた。
私は全てを理解した。この『のりたまこ』が一体なんだったのかということを。
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