誰かのために作るチョコ

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娘が自室で寝入ったあと、リビングでアイロンかけに励んでる。 紆余曲折の結婚生活も、はや十五年か。 そりゃ娘も成長するよね。 夫婦仲は今のところ、いたって普通。 特に良くもなく、だからと言って悪くもなく。 時々ケンカもするけど、もうお互い、対処方法もわかってる。 そっとジッと我慢して、嵐が過ぎ去るのを待つ。それしかない。 あまり多くを期待しない。いまさら性格変えられない。相手に対する諦めも肝心。 ときめきなら、ドラマに出てくる若手俳優が満たしてくれる。 夫が間違っても口にしないような、甘いセリフに胸がキュッとなる。 週3で通うパート先に、可愛い学生バイト君もいたりするけど、とうぜん目の保養。 そそくさと家に戻り、娘の習い事の送り迎えと、家事全般をやりこなす。 娘のことを溺愛してても、今流行りのイクメンとは程遠い夫。 本人はできれば、そうなりたいのだろうけど、それにしては仕事が忙しすぎる。 結果、週末はゴロゴロ。家の中の諸々は無関心にならざるを得ず。 そう言えば、本気で浮気を疑ったことも一度あって、それもちょうどバレンタインの時期だったはず。 コソコソ隠れてスマホいじってるから、言い逃れできないとこまで追及してみた。 本人はけっこう焦ってたけど、突き詰めていくと、ただ単に課金ゲームにはまってるだけだった。 そのうち飽きてやめてたし。 まあ、うちに限って、そんなドラマチックな展開もないか。 じゃあ愛は?どうだろう? 求められると、ちょっと面倒くさい。でも行為の後は、わりと嬉しい。 枯れて、しおれて肌の張りもなくなってきてはいても、いちおう女だと認められてるということ。 未だに、相手の中では。…それでいいや。
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