誰かのために作るチョコ

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「チョコトリュフ作りたいんだけど、手伝ってくれない?ママ」 リビングでぼんやりテレビを眺めてたら、キッチンのカウンター越しに、小5の娘がそんなことを言ってきて驚く。 「チョコ?誰かに渡すの?」 確かにバレンタインは明日だけれど、うちのこのガサツな娘は、今まで家で料理やお菓子作りなんてした試しない。 「友チョコ。交換しようって約束したの」 「友チョコなら、その友だちと一緒に作ればいいじゃない。どうして、うちでやるの?」 キッチン汚されたくない。あと後片付け面倒くさい。他でやってください。 「え、だって内緒でこっそり作りたいんだもん!」 「…………………」 それ、友チョコじゃないよね。確実に。 男勝りで、元気だけが取り柄で、女の子らしいとこなんて一切ない娘だと心配してたけど、もしかして一人前に好きな子でも、できたんだろうか。 誰かに恋して、その小さな胸をときめかせたりしてるんだろうか…。 「ぜったい失敗したくないんだよね。 書いてあるとおりにやれば、上手くいくかなぁ」 相手がどんな男の子なのか知らないけど、瞳輝かせて、そんなこと呟く娘の純粋さが、何だか羨ましい。 そうして少し懐かしいとも思う。 自分にだって、こんな頃があったのかな?なんて。
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