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「じゃあ半分こしましょう」
そう提案すると、先輩はニヤッと笑い、
「いいね、……ほら」
中身をポクッと折って小袋を開けた。
2人同時にチョコの欠片を口の中に放り込むと、独特の甘い匂いが広がった。
「なんか塾思い出しました」
「なっつかし」
隣人はククク、と笑う。
「お前あの頃いっつも隣でグーグー腹鳴らしてて、かと思えば時々はイビキで、めちゃくちゃうるさかった」
「んな、」
そんなこと言われても。
思わぬところから恥をかかされた。やり返してやろうと思ったが、恥になりそうなことを覚えていない。地団駄を踏もうとして、ふと
「このチョコ誰から貰ったんですか」
と訊くと、先輩は一瞬視線を逸らした。
「バイト先の人、だよ」
ピンときた。
「お客さんっスね?あのよく話してる人でしょ!俺、知ってるんスよ!」
「何の話だ」
「あの人以外のお客さんがいないとき長話してんの知ってんスよ!」
「さあて、どの人かな、客は色々いるからなぁ」
「とぼけないでくださいよ、付き合ってるんですか!?」
「ただの客だって」
「嘘だ、絶対付き合い始めるんだ!」
「あーもう、しつけえ!」
走って逃げて行く先輩を追いかける。
近い将来に訪れそうな別れの気配を察した。喜ぶべきことだけど、今は寂しさが勝っている。
この楽しい日々が永遠に続けばいいのに。そう思った。
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