最悪と最愛

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『私としたら、別れて上げるのが一番良いと思うんだけど・・・まぁ、考えてみて』 未来は最後にそう話を締め括った。 次の日、俺はパソコンの画面を眺めながら、未来の言葉を反芻していた。 あいつが何を言いたかったのか。分からないと惚けて、問題を先送りにするのは簡単だ。今までと同じように、与えられる愛情にぬくぬくと浸っているだけでいいのだから。 でも、本当にそれでいいのか?一番大事な問題を先送りにしていたから、俺は彰兄を傷付けたんじゃないのか?武蔵のバカに流されそうになったんじゃないのか? 「あーーー俺って最低だよな」 「うん、最低なのは分かった。自分を顧みて、自己嫌悪に陥るのも、自分を成長させる為には必要だと思うぞ?・・・だがな、ここは会社でお前は仕事をしに来ているってことを忘れるのは如何なものかと思うがな」 パシンと頭を叩かれ、俺はやべぇと呟いた。恐る恐る顔を上げれば、苦虫を噛み潰したような課長の顔がそこにはあった。 俺はガタッと椅子を鳴らしながら立ち上がり「申し訳ありませんでした」と頭を下げた。周りを見れば呆れた顔がちらほら。 「最近、どうした。ここ何日か心ここに在らずじゃないか。悩み事でもあるのか?」 暫く真面目にやってたのにと、心配気な課長の言葉に項垂れた。 「いえ・・・すみません。仕事します」 「まぁ、あんまり自分を追い詰めるなよ」 そう言って自分のデスクに戻る課長にもう一度頭を下げて俺は、しっかりしろと自分に言い聞かせた。
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