最悪と最愛

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◆ 2月に入り、ここ最近は暖かな日が続いていた。風には冷たさも感じるが、太陽の光がそれを調和している。 車の中は暖房要らずだよな、なんて思う俺は、現実を直視出来ずに逃げているのだろう。 チラリとハンドルを握る男を盗み見た。柔らかな髪をワックスで遊ばせるように整えている。サングラスに隠された目は切れ長で、鋭く見えるのに優しい色合いの瞳がその印象を変える。すっと通った鼻筋に薄い唇。儚い笑顔が似合う物腰の柔らかな人だ。 俺の初恋の相手でもあり、今現在の恋人でもある。 「・・・どこに行くの?」 朝早くに、寝ていた俺を電話で叩き起こしたあと、彰兄は家を襲撃し、掻っ攫うかのように車に乗せた。 俺は彰兄が帰国していたことも知らなければ、この車の行き着く先も知らない。 「宿題は解けた?」 俺の質問をスルーした彰兄が、質問で返してきた。 俺はコクリと頷き、彰兄へと体を向けた。 「ごめんなさい」 言い訳より何より、一番に言わなきゃいけなかった言葉。求めなければいけなかったのは、彰兄の許しなのに、俺はそれを放棄した。ただ、沸き起こる罪悪感を楽にしたかっただけなんだ。 そしてこの答えと一緒に、俺は彰兄への気持ちにも気付いてしまった。ーー違う。見て見ぬ振りをしていた気持ちと向き合うことになったんだ。 俺は彰兄が好きだ。でも、それは本当に恋愛感情なのだろうか。 「うん。良く出来ました」 彰兄は俺を一瞥すると口角を上げた。
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