最悪と最愛

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この何もない所で彰兄と二人っきり?俺はそのことに思い至って、酷く慌てた。 恋人同士。二人っきりで居れば、自ずとそんな雰囲気になるだろう。 でも・・・と逡巡する。 俺は自分の気持ちが分からない。彰兄に対して本当に恋愛感情を抱いているのか、同じだけの思いを彰兄に返せるのか分からないのだ。 それなのに、抱かれるのか?本当にそれでいいのか? 惑い躊躇する俺を余所に、ガチャと音を立て助手席の扉が開かれた。 「何してるの?降りて」 有無を言わせぬ口調で彰兄が告げる。動かない俺を、焦れたように腕を掴むと、無理やり引き摺り出す。ザクリと音を立ててズボンの裾のあたりまで雪が埋まった。雪道を歩くなんて思ってないからスニーカーで来た俺の足は当然のように雪に埋もれた。 ーーそう言えば彰兄はブーツを履いてたな。 「冷たい」 「そうだね。だから、早く行こう」 腕を掴んだまま無言で雪道を歩く彰兄が怖くて、足は冷たいし掴まれた腕も痛い・・・・・・何だか俺は心細くて泣きたくなってしまっていた。
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