最悪と最愛

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それは何だろうと俺は首を捻った。 『・・・分からないの?』 小さく『そう』と呟かれた声音に失望の色が混じった。あんなに大切にされてたのに、俺は彰兄を傷付けた。そして最悪なことに、その原因は俺が武蔵の色香に惑わされたからじゃない。彰兄に言わなきゃいけないことが思い付かないからなんだと、分かったから更に落ち込んだ。 『宿題だよ、広大』 「・・・宿題?」 『うん、近々帰国するから、それまでに考えておいて?』 彰兄はそれだけ告げると電話を切った。俺に宿題を残して。 ◆ 「何やってんだか」 呆れた顔をするのは片倉未来だ。以前、母親の策略?で、お見合いをした相手だった。見合いは破断になったが、妙に意気投合した俺達はその後も連絡を取り合い、友人付き合いをしていた。 「しょうがないだろ?」 俺はテーブルに置かれた生ビールに口を付けた。近所にある居酒屋で、未来相手に愚痴を吐き出していた。 「何がしょうがないんだか」 「俺だってだな、色々と考えてはいるんだよ」 言葉が尻すぼみになる。あれから1週間。彰兄からは毎日電話がきた。あのことには触れず、当たり障りのない話題で終始完結する。帰国の日程はまだ決まってないようで、その話も出ない。俺は罪人が罪を裁かれるのを待つようなそんな心境だった。
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