6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
次の月になって、来客があった。
アサヤを待っていた私の前に現れたのは、元旦那だった。
老けたな、と思う。
カッコ悪い猫背も、目じりのシワも、ダサいファッションも本当に昔のままだ。
「……やあ、ヨル」
「老けたわね、あんた」
思ったままの感想をズバリ言うと、相手は少しショックを受けたような顔になる。まさか、今になってもまだ自分のことをイケ男だと思っていたのだろうか。
「これでも、オシャレしてきたんだけどなァ……」
「用事は何? 私とあんたは気安く会うような関係ではないはずよ。お金だって貸してやらない」
「用事はね、特にないかな」
へらりと笑った元旦那に、苛立ちがMAXになる。
別れる直前はあんなに険悪だったくせに、何を今さら私の目の前に現れたというのか。
「今朝ね、夢を見たんだ」
「……夢?」
「君と出会ったときの夢でね、久しぶりに会いたくなった」
こんなロマンチストな人間だったっけ?
遠い目をした元旦那のいうことがどこまで真実なのか疑問に思う。それを普通は世迷言というのだと、言ってやった方がいいだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!