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目を開けるとそこは上野の公園だった。
そうだ。
僕は昨日、利用している小説投稿サイトのオフ会に行って、浴びる程酒を飲んで、そのまま酔いつぶれてしまったんだ。
ああ、ちょっと調子に乗り過ぎたな。仲良くして頂いている作家さん達に失礼な事をしてしまった。
特にS水の兄さんには、とんでもなく迷惑を掛けてしまった。
本当ごめんなさい。
「でも、可愛かったな。…兄さん」
僕は舌なめずりをして1人ほくそ笑んだ。昨夜の彼の味を思い出したのだ。
「そうだ、今度謝りに行こう。直接。フフフ」
日差しの暖かさと、公園を訪れる人の数から、もうとっくに昼なのだろうと、僕は重い腰を上げた。
目の前に丁度良い噴水があったので近づく。
徐に、水をすくい、バシャバシャと顔を洗った。
まだ水は冷たく、否応なしに頭が冴え渡る。
二日酔いなのか、喉が渇いていたので、ゴクゴクと直接水を啜った。
「プファー、生き返るわい」
その時だった。
「ほう、なかなか素質のある若者じゃな」
「ん?」
振り返り声の主を確認する。
「噴水の水を飲むとは、やりおるわい」
某々に伸びた髪と髭、黒く汚れた顔にギョロ目、黄色い歯を見せて笑っていた。
浮浪者の方だろうか。
汚れて破けたボロボロのダウンジャケットを着ているが、素足に直接履いているスニーカーに、僕は違和感を感じた。
「わしは、スニーカーの神様じゃ」
やはり浮浪者の方だったか。彼等は、よく自分の事を神様と呼ぶ。
しかし、スニーカーの神様とは。
僕はその靴の事を訊いてみた。
「その靴、ウデックスのレース用ですよね、おじさんマラソン走るんですか」
靴ひももイアンノットで結んであった。
「うむ、そう見えるが、これは全然違う。
何しろこの靴は魔法の靴、マジカルスニーカーなのじゃ」
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