第1章

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ああ、中二病の浮浪者の方だったか。 僕は優しく微笑んだ。 「この靴は、行きたい所に必ず行ける、魔法の靴なのじゃ、何しろわしは神様じゃ」 そりゃ時間が掛かるが必ず走って行けるってオチじゃないの、と僕はネタバレしようと思ったが、神様は続けて言った。 「若者よ、試しに履いてみると良い、さあどうぞ」 神様は靴をスポッと脱いで差し出した。 「…」 靴下は履いているものの、何か抵抗があったが、仕方なく履いた。 最初ヌルッとしたけど、流石にレース用、薄く柔らかい靴底が地面を捉えて心地良い。 「少し走ってくるが良い」 神様の好意を受けて、僕は走ろとした。すると、ストップのポーズをして言葉を付け加えた。 「待て!持ち逃げされては困るので3万円置いていって下さい。帰ってきたら返します」 なる程。僕は3万円を神様に渡した。 ああ、確かに走りやすい。 自然にスピードが乗ってくる感じだ。 公園の奥にある稲荷神社が見えた。 確かここの神社は縁結びだったな。 ふと、兄さんを思い出した。 スニーカーは普通に良い靴だったが、それだけだった。 どこが魔法の靴なのだろうか。 僕は噴水に戻った。 「あれ、神様?」 噴水には神様も僕の靴も、影も形も無くなっていた。 暫く呆然と立ちすくむ。 不思議な神様。 あれは夢だったのだろうか。
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