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ああ、中二病の浮浪者の方だったか。
僕は優しく微笑んだ。
「この靴は、行きたい所に必ず行ける、魔法の靴なのじゃ、何しろわしは神様じゃ」
そりゃ時間が掛かるが必ず走って行けるってオチじゃないの、と僕はネタバレしようと思ったが、神様は続けて言った。
「若者よ、試しに履いてみると良い、さあどうぞ」
神様は靴をスポッと脱いで差し出した。
「…」
靴下は履いているものの、何か抵抗があったが、仕方なく履いた。
最初ヌルッとしたけど、流石にレース用、薄く柔らかい靴底が地面を捉えて心地良い。
「少し走ってくるが良い」
神様の好意を受けて、僕は走ろとした。すると、ストップのポーズをして言葉を付け加えた。
「待て!持ち逃げされては困るので3万円置いていって下さい。帰ってきたら返します」
なる程。僕は3万円を神様に渡した。
ああ、確かに走りやすい。
自然にスピードが乗ってくる感じだ。
公園の奥にある稲荷神社が見えた。
確かここの神社は縁結びだったな。
ふと、兄さんを思い出した。
スニーカーは普通に良い靴だったが、それだけだった。
どこが魔法の靴なのだろうか。
僕は噴水に戻った。
「あれ、神様?」
噴水には神様も僕の靴も、影も形も無くなっていた。
暫く呆然と立ちすくむ。
不思議な神様。
あれは夢だったのだろうか。
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