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まあいいやと、僕は走り出した。
この靴が普通に気に入ったのだった。
例え3万円でも。
走るのは好きだ。
街を知るのも。
自分に問いかけるのも。
一番出来る。
人々や物を抜き去って走ると、僕は街と一体化する。
僕はどこに向かって、どこに行くのか。
優しく微笑む、兄さんが思い浮かんだ。
その時。
「バババーッ」
大きなクラクションに我に返ると、目の前にトラックが差し迫っていた。
誰かの悲鳴を聞いた。
僕の目の前に、僕の、魔法の靴が揃えて置いてあった。
トラックに轢かれた時の衝撃で脱げたのだろう。
でも、綺麗に揃えられたのは本当に偶然だろうか。
「あったあった。魔法の靴」
その声は、スニーカーの神様。
「もう、この靴は、お主には要らんじゃろ。返してもらうぞい」
え、神様、待って下さい。
「ん、なんじゃ、クレームなら、ここに連絡してくれんかの」
そう言って神様は名刺を置いた。
福天商会
そう書いてあった。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。
それじゃあ、またな」
神様が消えてゆく。
そして、僕の意識も、消える。
僕は今、病院のベッドで生活している。
トラックに轢かれて、右腕と左足を骨折してしまい、暫くの入院生活を余儀無くされた。
まあでも、実は嬉しい、て言うか、とても幸せです。
だって、兄さんにずっと看病して貰ってますので。ムフ。
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