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――1984年、夏。
小学六年生だった俺たちは、そのゲームに熱中していた。
「ほんとだ! 宝箱が出た!」
「ね。僕の言った通りでしょ?」
画面上に出現した宝箱を見て俺は驚き、祐介は得意げに胸を張る。
蝉の鳴き声が騒がしい夏の盛り。さびれたゲームセンターの片隅で、俺たちはテーブル型のゲーム筐体に並んで座り、画面を見ながらあれやこれやと言い合っていた。
「でも、宝箱を出す方法が『じっとしたまま動かない』なんて、そんなのアリか? こんなの普通にやってたら絶対気づかねーよ」
「いまさら何言ってるんだよ。これはそういうゲームじゃないか」
「納得いかねー」とぼやく俺に、祐介は「このゲームの醍醐味がわかってないね」と得意顔で言い返す。
――ドルアーガの塔。
村に一軒しかないゲームセンターに、そのゲームが入荷したのは7月末のことだった。
同級生でゲーム仲間だった俺と祐介は、夏休みが始まるとすぐにドルアーガにはまった。
俺たちはなけなしの小遣いを持ち寄り、村に一軒しかないゲームセンターに連日入り浸るようになっていた。
だって仕方ないだろ。ドルアーガの塔に隠された「謎」には、ゲーム好きな小学生を夢中にさせるのに十分すぎる魅力があったんだから。
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