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「21階の宝箱の出し方はわかった。次は22階だ」
俺たちは隠された宝箱を出現させるべく、あーだこーだと言い合いながら主人公の剣士ギルを操り、思いつく限りのアクションを試していく。
直感で動くヒラメキ派の俺と、データを元に推測する理論派の祐介は、同じ学校に通うクラスメイトだ。タイプが真逆な俺たちは、不思議と気の合う名コンビだった。
……が、そんな名コンビでも、いつも上手くいくわけじゃない。
「だーっ! わっかんねー!」
22階で行き詰まった俺たちは、一時間ほどもがき苦しんだ。
まあ、こういう日もあるさ。
「22階の宝箱はいったんあきらめて先に進んだ方がいいかもね」
「そうだな。仕方ないか……。あ~、でも悔しい!」
がーっと頭をかきむしり仰け反った俺は、すぐそばに立っていた男子と目が合った。
たぶん初対面だろう。男子は俺と同い年くらいで、髪が短く肌は小麦色に日焼けしていた。見るからに元気で活発そうな風貌だ。
そいつはわんぱくな笑みを浮かべると、俺たちに話しかけてきた。
「さっきからすごく楽しそうに遊んでるけど、何のゲームやってるの?」
「……ドルアーガの塔」
「へぇ~。それってどんなゲームなの? 私にも教えてよ」
……私?
言葉遣いに違和感を覚えた俺は、ちゃんと振り返ってそいつの全身を眺めた。
そいつはスカートを履いていた。
「私、美夏っていうの。よろしく」
ニカッと明るく笑うそいつは、男子みたいな女子だった。
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