プロローグ

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「なによケチ。遊び方くらい教えてくれてもいいじゃない」 「うるせー。女なんかと一緒に遊べるか」  ドルアーガの塔をプレイしながら、俺は絡んでくる美夏を邪険にあしらう。  男の俺が女子と仲良く遊ぶなんて、そんな恥ずかしい真似できるかよ。  そもそも、女子にこのゲームの面白さがわかるわけないだろ。  このときの俺は本気でそう思い、美夏を無視しようと心に決めていた。  が、 「ああもう! お前が話しかけるからゲームオーバーになったじゃないか!」 「ミスしたのはあんたでしょ。私のせいにしないでよ」 「うるせえ。初対面のくせに馴れ馴れしいんだよ」  無視するどころか、出会って五分で口喧嘩を始める俺と美夏。それを見て苦笑いする祐介。  美夏に八つ当たりしながら、俺はコンティニューしようと財布を取り出して……百円玉がないことに気がついた。 「祐介、百円貸してくれ」 「僕も今日の分の小遣いは使い切ったよ」  小学生の小遣いなんてたかが知れている。ゲームに熱中しすぎて財布が空になるのは、いつだって驚くほど早い。 「もうちょっとで次の階に行けそうなのに、今日はこれで終わりか……」  がっかりしていると、誰かにトントンと肩を叩かれた。  振り返ると、百円玉を持った美夏がにんまりと笑っていた。 「貸してあげようか」  ぐぐぐ……。なんてイラッとする笑顔だ。だが背に腹は代えられない……。 「あ、アリガトウゴザイマス」 「どういたしまして」  勝ち誇った顔で俺に百円玉を恵んでくれる美夏。  こうして俺と祐介のコンビに美夏が加わり、  俺たちの、ドルアーガの夏は始まった。
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