2人が本棚に入れています
本棚に追加
「なによケチ。遊び方くらい教えてくれてもいいじゃない」
「うるせー。女なんかと一緒に遊べるか」
ドルアーガの塔をプレイしながら、俺は絡んでくる美夏を邪険にあしらう。
男の俺が女子と仲良く遊ぶなんて、そんな恥ずかしい真似できるかよ。
そもそも、女子にこのゲームの面白さがわかるわけないだろ。
このときの俺は本気でそう思い、美夏を無視しようと心に決めていた。
が、
「ああもう! お前が話しかけるからゲームオーバーになったじゃないか!」
「ミスしたのはあんたでしょ。私のせいにしないでよ」
「うるせえ。初対面のくせに馴れ馴れしいんだよ」
無視するどころか、出会って五分で口喧嘩を始める俺と美夏。それを見て苦笑いする祐介。
美夏に八つ当たりしながら、俺はコンティニューしようと財布を取り出して……百円玉がないことに気がついた。
「祐介、百円貸してくれ」
「僕も今日の分の小遣いは使い切ったよ」
小学生の小遣いなんてたかが知れている。ゲームに熱中しすぎて財布が空になるのは、いつだって驚くほど早い。
「もうちょっとで次の階に行けそうなのに、今日はこれで終わりか……」
がっかりしていると、誰かにトントンと肩を叩かれた。
振り返ると、百円玉を持った美夏がにんまりと笑っていた。
「貸してあげようか」
ぐぐぐ……。なんてイラッとする笑顔だ。だが背に腹は代えられない……。
「あ、アリガトウゴザイマス」
「どういたしまして」
勝ち誇った顔で俺に百円玉を恵んでくれる美夏。
こうして俺と祐介のコンビに美夏が加わり、
俺たちの、ドルアーガの夏は始まった。
最初のコメントを投稿しよう!