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「イブリスさん!そっち行きました!」
白いローブを着た白髪の少女が叫ぶ。
その叫びとともに視界にはこちらに突進してくる犀のような魔物が現れた。
「あいよ!」
俺は手に持っていた銃をそいつに向け、ぶっ放した。
彫刻の施されたアンティーク・リボルバー。銃弾は銀製だ。
銀はもともと柔らかめの金属のためたいしたダメージにはならないが、元からダメージになど期待していない。
この銃撃の目的は弾丸に込めた魔法である。
銀、これほど魔力の媒体として優秀なものはない。
「動くんじゃねぇ」
銃弾は俺に向かっていた犀に直撃。直後、犀がその動きを止めた。
込めていた魔法は拘束の魔法。黒属性の中でも汎用性の高いものだ。
銃に新たな弾丸を補充し、動けなくなった犀に狙いを定め、放った。
「跡形もなく消し去ってやる」
撃ちだした弾は黒い波動となり、犀を飲み、その体を削り取っていく。
やがて波動が収まるころにはその犀がいたはずの場所には何も残っていなかった。
「イブリスさん!後ろ!」
「っと!」
そうこうしている間に後ろから違う犀が迫ってきていたらしい。振り返ったときにはすぐ近くまで迫ってきていたが、俺にたどり着く前に出現した防壁に激突した。
プリーストである白髪の少女の魔法だ。
「大丈夫ですか?」
「っぶねぇ……助かったぜサラちゃん。全く二匹もいるなんて聞いてねぇぞ……」
「そ、それが……」
少女が不安そうにあたりを見渡す。
「……ウッソだろ……これ全部クエストの標的かよ」
一匹二匹で何をうだうだ言っていたのか。
10はいる。もしかしたら20いるかもしれない。
俺たちの前には、無数の犀が現れていた。
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