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「い、イブリスさぁん……」
「たっくしょうがねぇなぁ……」
これはあまり多用したくないのだが、こうなってしまっては仕方ない。
俺はまた新たな銃弾を装填し、今度は自分の頭に突きつけた。
「巻き込まれんじゃあねぇぞサラちゃん」
「は、はい……!」
少女が俺にしがみついてくる。
犀たちも動き出した。仲間の敵だろうか、それとも縄張りを荒らされたことに対する怒りだろうか、その鋭い角を武器に俺たちに迫ってくる。
「”flooD”」
俺は犀たちを一瞥し、静かに引き金を引いた。
「ぐっ……!」
銀の銃弾が頭を貫く。相変わらず、かなり痛い。
銃弾は確かに俺の頭を貫通したが、しかし血液が噴出すことはない。
その代わり、現れたのは無数の黒い怨霊……のようなもの。
それらはそれぞれ犀に向かって飛来し、とり付き、そして内側から……消した。
一度に全ての敵を殺す、範囲攻撃。非常に強力だが、使うたびに自分を撃つ必要があるので正直進んでは使いたくない。
「や……やった!クエストクリアです!これで今晩の宿代は確保できました!」
「飯代がまだだけどな」
「うぇ……」
「おまえさぁ……いい加減正式なギルドにつけよ。俺みたいなフリーターと一緒だとお前のためにもならないし俺の金も足りねぇの。宿代が二人分になるだけでも結構きついんだぞ?」
そう、先ほどから俺と行動をともにしてるこの少女……別にたいした知り合いというわけではない。
俺は正式なギルドに所属していないフリーター。一般の依頼を受けつつどうにか食いつないでいるろくでなしだ。
彼女はそんな俺に……
「い……嫌です!私はイブリスさんを師匠にするって決めたんです!」
魔術を習いたいという物好きだ。
……こうなった理由は数日前までさかのぼる必要がある。
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