少女、冒険者になる

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「サラ……サラ・ミディアムスさん。希望クラスは魔術師、ですね」 少女が記入した書類を確認する。出身はこの街、アヴェントから少しはなれた辺境の村、田舎とまではいかないが都会とはいえないだろう。そこからはるばるやってきたようだ。 「すみません、それでは登録をいたしますのでこちらへどうぞ」 「はい!」 受付嬢の案内に白髪の少女……サラは元気な返事をし、彼女の後に続いた。 今、この世界は悪魔の軍勢に脅かされている。 突如異次元から現れたその軍勢は瞬く間に人の栄える国をひとつ潰し、その後もこの世界に住む人間の脅威として君臨しているのだ。 当然人間も黙ってはいられない。そうして立ち上がったのが冒険者たちであった。 剣術、武術、魔術。あらゆる戦闘術を使いこなし、悪魔を倒していく冒険者は人々のヒーローであり、憧れである。 そんな冒険者たちにクエストを与えたり、冒険者になりたいと思うものを導く窓口となるのがこの世界冒険者機関。通称”機関”なのである。 アヴェントに置かれた”機関”の本部は冒険者志望の人が最初に足を運ぶ場所。 そしてサラも、冒険者に憧れ、冒険者になりたいと願うものの1人であった。 「一言に魔術師といっても、大まかに2つの種類があります。攻撃魔法を得意とするメイジ、そして仲間の回復など、サポートに長けたプリースト。登録と同時に貴方がどちらに向いているのかも選定させていただきますね」 「は、はい」 先ほどよりも返事に元気がない。どうやら緊張しているようだ。 それも仕方のないことだろう。明るかった窓口と違い、今歩いている廊下は少し薄暗い道だ。女性冒険者はたいてい同じような反応をする。 しばらくそんな道を歩いていると、番号札のつけられた扉が並ぶ場所へ出てきた。 「えっと……5番5番……ここですね」 受付嬢は「5」と書かれた扉の前で足を止める。 「ではこちらで登録を行わせていただきます」 「い、痛かったり……しないですよね?」 「あ、あはは……登録用の水晶に触れていただくだけなので心配ないですよ」 前言撤回。この子は少し緊張しすぎだ。
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