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「それではこちらへ」
その部屋の中は、今まで歩いてきた廊下以上の薄暗さであった。
床には魔法陣が描かれ、それが淡い輝きを放っている。
その中心には机に載せられた水晶玉。これも同じく淡く輝いていた。
光源といえばこれくらいのもの。それ以外にはせいぜい小さな照明がところどころにつるされているくらいであり、それが逆に怪しげな雰囲気をただよわせている。
「中心の水晶に手をかざしてください。それであなたの魔力適正の計測と冒険者登録を行います」
受付上は魔法陣の一角に先ほどサラが記入した用紙をおき、サラを水晶まで誘導する。
「こ、こう……ですか……?」
「あ、ち、ちょっとまっ……!」
「きゃっ!?」
促されるままにサラが手をかざした瞬間、水晶はその輝きを増した。
先ほどまでの淡い光とは比較にもならない、直視できないほどの大きな光である。当然こうなるとも思っていなかったサラはそれを思い切り食らってしまったわけで。
正直、本気で失明するのではないかと思った。
「す、すみません!注意するのをすっかり……」
「あ、あははぁ……大丈夫ですよ、大丈夫……」
水晶の輝きが収まり、こちらに戻ってくるサラはそう口にするが、反面その足取りは見事なまでの千鳥足。完全に目を回している。
「と、とにかく、これで登録は完了です。あなたのことが”機関”のデータベースに登録されましたので……魔力適正を」
ふらふらと歩くサラに危なっかしさを覚えつつも、受付嬢は先ほど魔法陣に置いた用紙を拾いに良いく。
紙にはサラが記入したものとは違う、新たな文字が浮かび上がっていた。
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