76

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 それから何度も定期的に出会い、別れ、その繰り返しでずっと来た。  彼女との僅かな時間。それは僕の生涯にとってかけがえのない時間。  いや、知っているんだ。彼女は僕に会いに来ているんじゃないって事を。  僕じゃない誰かに惹かれて、定期的にここを訪れ、そのついでに僕に会って話をして。  路傍の石ころのような、それだけの関係。  僕らを隔てる「76」。これ以上大きくはならないが、だからといって僕の力じゃ小さくする事もできない。残酷で、決まり切った数字。僕が思うよりも遙かに巨大な力で決められた数字。  誰かが見たら、こんな関係、不毛と思うのかも知れない。僕が他人のそれを見たら、多分同じ事を思うだろう。  だとしても、僕はこの関係を続けていたい。 「“またね”」 「“またね”」  また今回も、いつも通りの挨拶で僕らは別れる。彼女が振る尾を眺めながら、次会える時を楽しみにしながら。  僕の体の表面を駆け巡る電波に乗って、言葉が駆け巡る。 「さあ! 世紀の天体ショー、皆様は見る事ができましたか!? 実に76年振りに地球に最接近したハレー彗星。すごかったですねー! この彗星は76年周期で太陽の周りを公転しているそうで、次の 地球への最接近は76年後の――」
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